すやすやと眠り続ける彼を横目に、自分で淹れた緑茶でほっと一息つく。
彼は先ほど炬燵にもぐり込んでから、びくともしない。
色素欠乏症な彼の真っ白な頭だけが炬燵から生えているのは、異様な光景だった。
ふと傍から見てしまい、笑いを一人押し殺す。
彼はいたく炬燵がお気に入りだ。
米国育ちの彼は、まず日本に暖炉が無いのを文句を言い。
それからどこで知ったのか、囲炉裏が無いのを文句を言い。
それから炬燵というものを知って、機嫌を直した。
「おい、豪(ごう)。炬燵で寝ると、風邪をひくんだぞ」
まるで田舎にいる母のようだと思いながらも、炬燵の中の足をつつく。
反応はない。
まるで死んでいるかのように、すやすやと安眠を貪り続けている。
整った顔が惰眠に緩んでいて、幼子か子猫のようだった。
(あぁ、睫毛まで薄茶色…)
さらり、と、髪を梳いてやりながら思う。
閉じている瞼の奥には、金の放射を放つ七色の瞳が隠れている。
彼の瞳は特別だった。
真っ蒼の瞳に、金の向日葵が咲いている魅惑の瞳。
こちらを見透かすような光を放つ瞳を思い出して、なんとなく、今すぐにそれを見たくなる。
「眠り姫…いや、王子か。眠り王子を起こすには、何だったかな……」
沸いてるとしか思えない自分の思考に零れる笑みを隠さず、そのまま彼の唇を塞いだ。
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