『彼』と『彼女』と『僕』 ...3






桜の蕾が綻び始めた弥生の空は明るい。
彼と彼女とともに育った地を散歩しながら、ゆったりとした時の流れに思いを馳せる。

僕らは、変わった。大人になった。




昔の僕は外で駆けっこをするよりも、部屋で本を読んでいる方が好きな子供だった。
父親からもらった昆虫図鑑や、星座の本がお気に入り。 彼や彼女と一緒に眺めては、二人に受け売りの話を聞かせていた。
そんな僕でも、彼に連れ出されて河原で野球もサッカーもした。
自転車に乗れるようになったのが、三人の中で一番早かったのが密かに自慢で。
学校ではまじめに授業も受けてたし、無遅刻無欠席の優等生。




そんなだったのに、今、僕は何をしているかというと。

カメラマンなんて目指して、専門学校に通っている。
これには、彼や彼女も驚いてた。

それがちょっぴり、面白くて嬉しい。






彼も彼女も僕も変わってく。大人になってく。
そう思ったとき、不思議な気がした。怖くはなかった。

この街に、また春が来る。もうすぐ桜も咲くだろう。





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by穂高 2009/05/30