『彼』と『彼女』と『僕』 ...2






彼と彼女と僕は、ずっと一緒に育ってきた。
この団地で、この河原で、この空の下で。




小さな子供だった頃。
補助輪つきの自転車で毎日走り回っていた彼は、僕らのリーダーだった。
秘密基地をつくろうと言い出した次の日には、河原に材料を集めていた。

悪戯をするのも、昼寝をするのも、彼と一緒だった。

夏休みの最終日に、溜め込んだ宿題を一気にやってる漫画みたいな少年。
でも、青いビー玉を集めていた彼女のために、ラムネの瓶からビー玉を取り出してくれるようなタイプ。

不器用だけど、いいヤツなんだ。




そんな彼が、似合わない眼鏡をかけてお受験だってさ。
初めてそんな彼を見たときは、ちょっと笑ってしまった。

医者になるんだって。
バリバリの体育会系だった彼の、いきなりの転身には驚いたけど、僕は応援してる。


分厚い参考書の入った鞄を重そうに背負った彼が、人懐こい笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。
開口一番。
何を言うかと思ったら、

『彼女できた?』

だって。
それは余計なお世話だよ。





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by穂高 2009/05/30