彼女は、とても綺麗になった。
ヒールの高い靴を履いて颯爽と街を歩く姿は、様になっていて僕は息を飲む。
きらりとピアスが光った。亜麻色の髪が風でなびく。
昔の彼女は、大人しい女の子だった。
僕らの後をそっとついて回っていて、話しかけると俯いて、そして気恥ずかしそうに小さく笑う。
折り紙が得意で、鶴の折り方を僕に教えてくれたのは彼女だ。
それなのに、かくれんぼの時はすぐに僕らを見つけ出してしまった。
そんな子だったのに。
あぁ、時間が経ったのだと、ふっと思う。
彼女は、とても綺麗になった。
そのしなやかな身体は、しゃんと真っ直ぐに天を目指す野生の花のような。
彼女は柔らかな風を纏いながら、僕に気付いて手を振った。
それに応えながら息を深く吸う。
春の匂いがした。
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